3月上旬の夕暮れ時、東京都大田区にある水素ステーション(ST)に1台の大型トラックがやってきた。水素STを営む岩谷産業の社員が慣れた手つきで充塡(じゅうてん)口にノズルを差し込むと、勢いよく気体の水素の注入が始まった。
トラックの水素タンクは20分ほどで満タンに。その後、トラックは約2キロ離れたヤマト運輸の大型物流拠点「羽田クロノゲート」へ向かった。荷物を積み込むと、目的地の群馬県内の物流拠点に向けて再び走り出した。
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トラックはトヨタ自動車と日野自動車が共同開発した燃料電池車(FCV)。水素と酸素を化学反応させて電気をつくり、モーターを回して走る。トラックで主流のディーゼルエンジンのような音や振動がなく、走りは静かで滑らか。週に1回ほど乗るドライバー歴33年の渡部誠さん(54)は「ディーゼル車は荷物をたくさん積むと走り出しが遅れることがあるが、このFCVは遅れない。パワーがあって、振動が少ないので運転もすごく楽。もっと広がってほしい」と話す。

ヤマト運輸は2023年5月…