YOASOBI 仕掛け人たちの楽屋裏②
「小説を音楽にする」というコンセプトで活動する2人組ユニットYOASOBI。昨春配信した「アイドル」は国際的な音楽チャートで1位を獲得しました。そんな国内外での活躍の陰には、結成時から2人を支えてきたスタッフたちがいます。その楽屋裏に迫りました。=敬称略
- (連載初回)YOASOBIの歯車が動き出す 帰り道が一緒になった他部署の2人
「すばらしいアーティストがいる」
2019年11月、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の経営企画部門にいた増田雅子の元に、上司からそんなメールが届いた。メールには、YOASOBIのデビュー曲「夜に駆ける」のミュージックビデオ(MV)のURLが書かれていた。楽曲を聴いた増田は直感した。
「めちゃめちゃいい。売れると思う」
当時この曲はYoutubeでMVが公開されているだけで、まだ有料配信はされていなかった。増田は、15年にソニーグループの傘下に入った米音楽配信会社「The Orchard(ジ・オーチャード)」のスタッフも兼務しており、そこから配信できないかと考えた。

オーチャードは主にインディーズアーティストの楽曲を、SpotifyやApple Musicなどの配信プラットフォーマーに提供している。19年夏に日本オフィスを立ち上げたばかりで、手がけるアーティストを探しているところだった。
増田はYOASOBIのプロデューサーの一人、SMEの屋代陽平とは旧知の間柄で、すぐに会うことにした。
そのころ屋代はYOASOBIのもう一人のプロデューサーであるSMEの山本秀哉と、「夜に駆ける」のMVが100万回再生されたら記念に配信することを検討していた。
その達成が間近となり、SMEなどのメジャーレーベルから配信することも考えたが、お金をかけてプロモーションをすることになるため社内決裁に時間がかかり、達成の「熱」があるうちに配信できない懸念があった。
そんなときに増田から、オーチャードで担当したいと持ちかけられた。プロモーションにそこまでお金をかけないため、必要な決裁も少なく、素早く配信できるという。それが屋代と山本には魅力的に映り、話に乗ることにした。
20年1月、それは突然に
1997年に設立されたオー…