見つかった手紙
「岸辺のアルバム」「西郷札」などを手がけた大物テレビプロデューサーが2020年3月28日、死去した。脚本家だった妻は、遺品整理をするうちに封筒の束を見つける。
夫が前妻と交わした手紙だった。手紙を見つけたのは、夫の死後4回目となる秋の日。灰色の世界をさまようように暮らしているさなかだった。
読みたい。いや読んではいけない、読む必要もない。
迷う妻にその年、がんの再発が告げられていた。考える時間は限られていた。
思い悩んだ末、妻は手紙を手に取り、読み始めた。自分と出会う前の、自分の知らない夫の面影を追いながら。
崩壊する家庭を描いた「岸辺のアルバム」
夫の堀川とんこう(本名・敦厚、当時82)が肺がんで亡くなったのは、好きだった庭の大島桜が真っ白に咲いたころ。
手がけたドラマの一つは山田…