公立学校教員の過労死が後を絶ちません。公務災害の認定をする地方公務員災害補償基金(東京都)への取材では、2015~23年度の9年間で39人に上ります。

 40年間、遺族らの代理人を務めてこの問題に向き合ってきた松丸正弁護士(78)は、全国から相談が寄せられるたび、依頼者のところに出向いて話を聞いてきました。その経験から、過労死の背景には「教員特有の問題がある」と指摘しています。

 ――教員の過労死がなくならないのはなぜでしょう。

 根本にあるのは、1971年制定の「教員給与特措法」(給特法)です。時間外勤務は原則としてさせてはならないとし、残業代を支払わない仕組みです。

 ただ、実際には過労死ラインを超えた長時間の残業をしている教員は多い。文部科学省はこれを「自主的・自発的」、つまり教員が好きでやっていると解釈してきました。

 そうなると、校長や教頭らは、勤務時間を管理する必要がありません。これが異常な長時間勤務の温床をつくってきたのです。

 かつてはタイムカードなどの勤務時間を把握する仕組みもほとんどありませんでした。その結果、地方公務員災害補償基金による公務災害の認定が難しく、過労死した後に10年前後かけた裁判でようやく認められる事例が多くありました。公刊されている判例集でも約30例あります。

 ――近年は変わってきたのでしょうか。

 少しずつですが、変化はあります。

 文科省が2016年に行った勤務実態調査では、教諭の1日当たりの学校内の勤務時間は、小学校=11時間15分、中学=11時間32分。教諭だけでなく校長、副校長・教頭も10年前と比較して延びていました。

 これを受け、中央教育審議会(文科相の諮問機関)は19年に、勤務時間を「在校等時間」として把握することを提言しました。

「在校等時間」の意味

 それまでは校長が時間外勤務…

共有
Exit mobile version