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ウクライナ東部ドネツク州にある捕虜の一時収容施設で、取材に応じる「コチェブニク」と名乗ったロシア兵=2024年5月28日、杉山正撮影
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 「ロシア軍は我々を放してはくれない」

 ウクライナへの全面侵攻が始まった2カ月後、ロシア兵の男性(34)は医療班のトラック運転手として入隊したはずだった。それから約2年、その間、戦闘任務につかされ、契約書は「自動更新」されて除隊は許されなかったという。

 カザフスタンとの国境に近いロシア南西部サラトフ出身。「コチェブニク」というニックネームを名乗った。

 入隊の理由は、それなりにあった。「ロシア兵を助けたい」。親も妻子もいない。必要以上のカネが欲しいわけでもなかった。

 ただ、戦場に身を置こうという覚悟をしていたわけではない。それなのに、軍と交わした契約書が切れても抜けられない。

おびえた「自分の番」

 契約期間が過ぎた翌月の今年5月、ドネツク州の激戦地に送られた。3カ月前にロシア軍が占領したばかりのアウジーイウカの拠点から、西に進む命令を受けた。「(進軍後の)足場固めのため」と説明されたが、実際は最前線に送られた。

 運転手という役回りは、いつのまにか突撃兵という任務に変わった。

 男性は少し前、トイレ掃除などのささいなことで上官と意見をたがえたことがあった。「(任務は)その罰だったのだと思う」

 装甲車に乗って出発した兵士の多くが戻ってこないのを見てきた。誰もが「いつかは自分の番」だと、おびえていた。

 夜も明けきらぬ午前4時、3台の装甲車で目的地に向かった。6人が乗った自分たちの車しか到着しなかった。他の2台がどこに消えたのかはわからない。

【連載】最激戦地 ロシア・突撃兵の証言

 「最も困難な状況」。ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドネツク州の前線についてこう表現しています。ロシアが兵士を大量投入し、攻勢を強めているためです。一方、現場のロシア兵は何を思い、戦うのでしょうか。この最激戦地で捕らえられたばかりのロシア兵3人が取材に応じ、攻勢の裏側にある悲惨な実態を記者に証言しました。

 激しい砲撃にさらされ、装甲…

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