「『生活保護だけは受けたくない』って言われて、困っている」
貧困問題にかかわる支援者から、そんな声を聞く。昔からあったが、最近は増えたように感じる。
私も取材相手から同じ言葉を言われたことはある。非正社員もいれば、低年金の高齢者もいた。しかし、生活保護を敬遠する気持ちを語ってくれる人はなかなかいなかった。
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浮かんできた生活苦
あるきっかけから、15年以上も収入が最低生活費(生活保護基準)以下の状態にあるとみられながら、生活保護の利用に踏み切れない30代半ばのシングルマザーがいることを知った。
代理人の木原万樹子弁護士を通じて取材を打診すると、「自分が話すのはしんどいけど、支えてくれている人に話を聞くのはかまわない」と話したという。
そこでまず、木原弁護士に聞いた。
2023年11月、女性は大阪市内にある木原弁護士の法律事務所を訪ねてきた。子どもの交通事故の相談だった。
事故について話を聞くうち、木原弁護士は別の問題が見えてきた。それは女性の生活苦だった。
持病かかえて4児育てる
女性は3歳から10代後半まで4人の子を育てる。うち2人は知的障害児。女性自身も軽度の知的障害があるが、弁護士とのやりとりや理解力に問題はない。
相談当時、安定した収入は児童扶養手当や特別児童扶養手当などの公的手当だけだった。後に障害年金の受給が決まったが、離婚した前夫からは養育費の支払いがなく、実家も生活が苦しくて頼れない。手当と年金を合わせても最低生活費以下だった。
家計には5人分の食費や家賃、光熱水道費、保育所や小学校の費用などがのしかかる。
女性は生活費の足しにしよう…