佐賀県の県立高校に勤める中堅の女性教諭は年に数回、ある職員会議が近づくと身構える。
「『女子だから』という発言が今年も出るのだろうか」
それは、「進路検討会」。3年生一人ひとりの受験する大学について教員が議論し、第1志望や併願の戦略を考える会議だ。
出席するのは、校長、教頭、進路指導主事、各クラスの担任、教科担当者。約300人の生徒それぞれの模試の成績、三者面談で聞き取った家庭状況が巨大なホチキスで留められ、出席者全員に配られる。
5年前の勤務校でのこと。第1志望の国立大薬学部がD判定の女子生徒がいた。経済的事情で私立の併願はしない。
校長はこの生徒の受験先について、担任に助言した。
「女子はメンタルが弱いから、浪人に耐えられないだろう。工学部に変えさせろ」
校長の言葉に違和感を抱いた女性教諭。進路指導を担う教員の偏見が、生徒の選択にも影響を与えているのではないかと考えています。記事の後半では、専門家による分析も紹介します。
女性は耳を疑ったが、他のクラスのことで口を挟めなかった。出席者からも異論は出なかった。
E判定でも挑戦するのは「男子ばかり」
医療に興味があるなら工学部で医療工学を学べる、と勧めなさい。そう校長は続けた。生徒はこの「アドバイス」に従い、志望校も学部も変えて現役合格した。
合格できてよかった、と女性…