Smiley face
連載「シン・ガラパゴス」③

シン・ガラパゴス ③

スマートフォンは、私たちにこれほど身近な製品でありながら、もはや生産する国内メーカーは一握りになった。かつて、独自の進化をとげた「ガラケー」の世界は、どんな変化をたどり、この先、どこへ向かうのか。

 「映画の世界だと思っていたものが、今では当たり前になっている。次はどんな風に変わるんだろうか」

 そう話す大沼彰(65)の表情は、明るい。「こんな夢のような業界は、なかなかない」

 大沼のキャリアは、日本の携帯電話市場の歩みと重なる。約30年間、主に営業畑で、携帯電話事業に身を投じてきた。最初に担当した「携帯電話」は、自動車に備え付けの電話だった。それが持ち運びができる肩掛け型のショルダーホンへと変わり、ポケベル、「ガラケー」、スマートフォンに進化した。

 振り出しは松下電器産業(現パナソニックホールディングス)。携帯電話事業が黎明(れいめい)期から成長期に向かう道程だった。みなが市場の成長を確信していた。

 その後、韓国サムスン電子、台湾HTC、中国の華為技術(ファーウェイ)へ。海外企業を渡り歩いた。転機にさしかかった日本メーカーを尻目に、大沼が身を投じたアジア勢は、成長を続けた。

 外資系に身を移したのは、携…

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