病院の管理棟に展示されているクリストフ・ヘルドウィンさんの絵画=本人提供

 ベルギー北部のズーアーセルにあるベタニエ精神科病院の管理棟。その一角に鮮烈な色彩の絵が飾られている。

私が私であるために ベルギーの精神医療改革

私が私であるために~ベルギーの精神医療改革③

日本と同じように、精神科医療を多くの民間病院が支えているベルギー。「本人中心」の理念をもとに地域医療へと軸足を移し、長期の入院を減らそうとしています。どんな取り組みなのでしょうか。日本の医療・福祉分野の関係者とともに現地を訪ねました。

 作者は、クリストフ・ヘルドウィンさん(39)。統合失調症を抱えながら創作活動をし、同院のデイケアのボランティアスタッフとして絵を教えている。2度の入院やアパートでの一人暮らしなど、精神疾患がある当事者としての経験を生かし、精神疾患がある仲間を支える。「経験ある専門家」とも呼ばれる。

 「絵を描くことが自分の強みだと発見でき、自分で選択する人生の意味を見いだし、自立した生活に誇りを持てるのは、デイケアがあったから。スムーズに話しにくいときもある僕にとって、絵は様々な色で感情を表現できる。作品を通して経験を伝えたい」とヘルドウィンさんは語る。

 このデイケアができたのは2012年。ベルギー政府が10年から始めた精神医療改革がきっかけだ。本人が望むことを起点に、その人の強みを生かすリカバリー(回復)志向のケアという方針に沿って、病気であることだけでなく、できるかもしれないことに焦点を当てる。こうした考えに基づく関わりが、ヘルドウィンさんが新たな一歩を踏み出し、自信を持って生きることにもつながっている。

「病院では孤独だった…」

 デイケアの職員は、ヘルドウ…

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