週末に深センのロールケーキ店にできた行列。声を掛けると多くが香港からの客だった=2024年6月22日午後、小早川遥平撮影
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 中国南部の広東省深圳の大型ショッピングモール。6月の週末、中国発祥の人気ロールケーキ店の前に、長い行列ができていた。

 商品を手に記念撮影をしていたのは、中国本土の客ではなく、深圳に隣接する香港の人びとだった。

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 「口コミで多くの人が買っているのを見てきました」。香港の会社員スー・イップさん(33)はそう話す。参考にしたのは、中国最大の口コミアプリ「大衆点評」だったという。

 イップさんはこの日、友人4人とともに昼すぎに香港を出た。深圳で買い物をしたり、食べ歩きをしたり。深圳で午後7時過ぎまで遊んでも、電車に乗れば午後9時ごろには香港の自宅に帰れる。大好きなマッサージは1時間半で200元(約4300円)と香港の半分以下だ。交通費を考えても十分におつりがくる。このところ2~3カ月に1度は深圳に遊びに来ているという。

 イップさんは、安いだけではなく、サービスも良くなっていると感じている。香港で飲食店に長居しようものなら愛想の悪い店員に追い出されることもある。時間を気にせずすむ深圳は、心穏やかに過ごせる場所だ。

 深圳はかつて、中国本土から香港に向かう人びとであふれたが、その風景は変わりつつある。週末に香港を離れ、深圳を訪れて買い物や食事、レジャーを楽しむ人びとが現れているのだ。「北上消費」と呼ばれ、社会現象になっている。

なぜ、香港の人々は北へ向かうのでしょうか。深センと香港から理由を探ると、いまの香港のサービス業に対する不満の声が聞かれました。

「客の9割は香港から」

 香港との境界沿いには、歯医…

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