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被爆体験者の問題を長崎県などに訴える川野浩一さん(右)=2024年7月18日、長崎市、小川崇撮影
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 夫婦でかかりつけの病院にいくと、診察や処方される薬にかかる費用は、夫はゼロ。窓口で支払う費用は、妻の場合、ほぼ自己負担だった。

 長崎市の隣町、長崎県長与町に住む川野浩一さん(84)は、被爆者健康手帳を持つ被爆者だ。

 妻の邦子さん(83)は、被爆者ではなく「被爆体験者」だ。

  • 【そもそも解説】被爆体験者とは? 置き去りにされた長崎の被爆者

 浩一さんは5歳のときに、爆心地から約3キロで被爆した。家の前の路地で近所の友人と話している時、山の向こうで爆音が聞こえたが、それから記憶がない。気づいたら、友人といた場所から約15メートル離れたところで倒れていた。爆風で吹き飛ばされていた。

 邦子さんは4歳だった。爆心地から北東に約10・2キロの旧伊木力村(現在の諫早市)で原爆に遭ったという。幼かったため、あまり記憶が無いが、自宅の庭にいたことを覚えている。近所の家のガラスが割れていた、と家族は話していた。

 しかし、国が線引きした、いびつな「被爆地域」によって、2人の間には差ができた。

【連載初回】「被爆体験者」と呼ばれて 首相に訴える苦悩

原爆に遭いながら、被爆者として認められない人たちがいます。「被爆体験者」。置き去りにされ、救済を求めて声をあげ続ける被爆体験者の思いとは。

 国は1957年、旧長崎市の…

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