3年前、国会の所信表明演説で岸田文雄首相は高らかにうたいあげた。
「新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています」「分配なくして、次の成長なし」
偏在する富を国民の間で分けることで格差を是正する――。首相が掲げた「新しい資本主義」の理想は高かった。
しかし、その志は早々につまずく。2021年10月4日の政権発足を挟んで、日経平均株価は6日まで8営業日連続で下落。課税強化に前向きな姿勢が投資家に敬遠されたとも言われた。目玉政策に掲げた、富裕層が持つ金融所得への課税見直しは、首相就任から1週間もしないうちに封印した。さらなる株価の押し下げにつながるのを嫌ったからだった。
ほどなく「分配」は後景へと追いやられ、旧来型の経済対策にシフトする。就任後初めて組んだ同年12月の補正予算は、過去最大の約36兆円に膨らんだ。新型コロナの対策費を盛り込む一方、防衛費や防災対策の公共事業まで詰め込んだ。「規模ありき」の姿勢は、歴代政権よりも際立つ。
首相が率いた自民党の派閥「宏池会(岸田派)」は、創設者の池田勇人元首相をはじめ、宮沢喜一元首相や大平正芳元首相ら大蔵省(現財務省)出身者が多い。首相も、財政健全化のとりでである財務省に近いとみられていた。同省幹部が打ち明ける。
「当初は信じていたし、期待もした。政権が安定すればと思って、大型補正も組んだ」
■まるで「デジャブ」…