ダンス音楽が流れるフロアは、すれ違うのが難しいほど混雑していた。
6月2日午前0時すぎ、アイスランドの首都レイキャビクのイベント会場。群衆の合間をぬって、女性が家族とともにステージに向かう。リズムに合わせて拳を突き上げ、集った1千人ほどの市民を盛り上げる。
音楽が鳴りやんだ。マイクを手に、どんな言葉を発するのか。女性は「みなさんがいなければ、こんなことは起こりませんでした」と笑みを浮かべた。
ハトラ・トーマスドッティル氏(55)。大統領選(投票率80.8%)では33.94%の票を得た。8月1日から同国史上2人目の女性大統領として、人口38万人の島国を率いる。
アイスランドの大統領は権限が小さく、「国民の顔」としての意味合いが強いが、選挙では候補者12人のうち6人が女性で、得票率1~3位を女性が占めた。
世界経済フォーラム(WEF)が男女格差の状況をまとめる「ジェンダーギャップ報告書」で、アイスランドは2009年から15回連続のトップ。国会議員は63人中30人、閣僚は12人中6人が女性で、4月まで6年半、首相も女性だった。政治分野で平等に近いことが「独走」を可能にしている。

次期大統領、金融危機を乗り切ったことで有名に
トーマスドッティル氏は1968年、配管工とセラピストの両親のもとで生まれた。大学、大学院は米国で学び、MBA(経営学修士号)も取得した後、食品大手や飲料大手でキャリアを積んだ。
レイキャビクに戻ってからは、ビジネスに特化した大学の創設に携わったほか、女性として同国史上初の商工会議所トップを歴任。2007年に設立した投資会社は、金融界に女性の価値観を取り入れることを重視し、08年の金融危機を乗り切ったことで名をはせた。
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