一人暮らしをする遠藤シマ子さん=2024年6月25日午前11時54分、東京都新宿区、太田原奈都乃撮影

 日本最大級の繁華街、東京・新宿の歌舞伎町から徒歩20分。オフィスビルやマンションが立ち並び、昼夜多くの人が行き交う街に、一人の高齢女性が暮らしていた。

 歌好きで、地域の住民が集まる「カラオケ会」に参加し、お酒もよく飲んだ。ところが、昨年の夏、突然姿を見せなくなった。

 歌仲間の遠藤シマ子さん(86)は胸騒ぎがした。電話をかけても「出ることができません」と自動応答が続く。女性を一度アパートまで送り届けたことがあり、大家に事情を話して鍵を借り、部屋に入った。

 室内はクーラーがついたままだった。畳の部屋に目をやると、布団に横たわった女性。動かなかった。枕元にマグカップが転がり、こぼれたお茶が乾いていた。

 警察に通報し、現場検証に立ち会った。亡くなってから数日が経っていたという。

 「第一発見者になるなんて」。遠藤さんはつぶやき、「明日は我が身」と続けた。自身も夫にがんで先立たれ、近くの都営団地に一人で暮らす。「その時」に備え、遺影を準備してあるという。

 4207人――。都監察医務院が公表した、自宅で死亡した東京23区の単身高齢者の数だ(20年)。9年連続で増加した。

 孤独死は、政府も孤独・孤立…

共有
Exit mobile version