道路に横たわっていた7階建てビルは、冬を前に大半が撤去された。
昨年11月、解体で出た物品が運ばれた海べりで、楠健二さん(56)は家族が収まる写真を見つけた。
石川県輪島市中心部でビルの下敷きになった、店と家族。
ビルの隣で居酒屋「わじまんま」を営んでいた楠さんは、妻の由香利さん(当時48)と長女の珠蘭(じゅら)さん(同19)を失った。
あの日から、1年。
【連載初回】家族と過ごした元日
昨年の元日、最大震度7の激しい揺れが能登半島を襲いました。能登の人たちは家族や友人らと楽しい正月を過ごしていました。
昨年の元日。店は休み。
部屋着のまま、次女と次男を含めた家族5人、店の上にある3階の自宅でのんびりと過ごしていた。
「テレビの前でみんなでごろごろ。うちの家族は仲がいいからさ、いっつもくっついてんだよ」
午後4時6分、市内で震度4。
外に出ようと着替え始めた直後、震度7の揺れが襲った。
後頭部に衝撃を感じ、そのまま気を失った。
飼い犬の鳴き声で気がつくと、隣のビルが倒れ、自分たち家族のいる自宅が押しつぶされていた。
次女と次男は助け出せた。
由香利さんと珠蘭さんは顔が見えるのに、体はがれきに挟まれている。
体を引っ張っても動かない。のこぎりやジャッキを使ってもだめだった。
「手の届くところにいた家族をさ、助けられないやつなんか、父親失格じゃん」
避難所では夜ごと、がれきに挟まれた2人の姿が目に浮かんだ。
残った家族の生活を考えて4…