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 ◇第96回全国選手権(2014年)1回戦

 春日部共栄(埼玉)500000000 5

 龍谷大平安(京都)000000100 1

 先頭打者に安打を許すと、麦わら帽子をかぶった相手の応援団から沸く大歓声が、背中を突き刺してくるような感覚になった。

 「マウンドにいる時間が、めちゃくちゃ長く感じた」

 第96回全国選手権大会(2014年)の開幕試合。甲子園の春夏連覇を狙う龍谷大平安(京都)の2年生左腕・元氏(もとうじ)玲仁は、頭が真っ白になっていた。

 春日部共栄(埼玉)を相手に、一回表のマウンド。抑えようと思うほど、力んで手元が狂った。

 無死一塁、次打者の投前へのバント処理を悪送球し、3番打者の中犠飛であっさりと先制を許した。そこから死球を挟んで4連打で一挙5失点。1死しか取れず、27球で降板した。

 その後の試合のことは、「全く覚えていない」。以降は、同学年の左腕・高橋奎二(現ヤクルト)らが相手打線を抑えたが、チームは一回に背負ったビハインドを覆せなかった。選抜王者の夏は大会初日で幕を閉じた。

 3年生エースの中田竜次、後にプロに進む高橋ではなく、背番号11の元氏が先発したのは、奇策でもなんでもなかった。

写真・図版
春日部共栄―龍谷大平安 1回表にピンチを迎え、マウンドの先発元氏(左)の元に集まる龍谷大平安の選手たち=2014年8月11日、阪神甲子園球場

 選抜の決勝では好救援。夏の京都大会も決勝で先発し、8回無失点でチームを甲子園に導いていた。

 ただ本人には不安があった。「マックスは2年の春。夏は『なんで抑えられてるんだろう?』って感じでした」

 下り坂に入るきっかけは、選…

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