【動画】「8月6日夕方のきのこ雲の最後の姿」。雲の様子が不気味になっていく様子が分かります=益田姫奈さん提供、佐藤慈子撮影

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 夕日に照らされた、赤黒くて大きい不気味な雲。山の向こうは広島市内の街が燃える火で赤く染まっている。

 現在、札幌市内の大学に通う益田姫奈さん(19)は、広島市立基町高校3年生だった今年1月から卒業式直前までの約2カ月間で描き上げた。

 当時5歳の広中正樹さん(85)が8月6日の夕方に自宅前で見た、日没前の空の記憶だった。

 広中さんは今は広島県福山市在住で、頻繁に会うことが難しかった。電話で話し、描いた絵を写真に撮って送るやりとりを続けてきた。

 2月21日、証言活動に合わせて広島市内に来た広中さんと一緒に絵を完成させた。

広中正樹さん(左)らに見守られながら、絵を仕上げる益田姫奈さん=2025年2月21日、広島市、佐藤慈子撮影

 「雲の色、いいと思うよ。悲しげに見える感じが表れとる」

 「燃えている場面はここからは見えない。山の上がぼわっと赤く染まってる感じ」

 「水車小屋の隣の母屋は、もう少し大きくて三角屋根だった」

 そう話す広中さんの隣で、すぐに絵の具を塗り重ねていく。シルエットだった家屋が鮮明になり、絵全体に命が吹き込まれるように力を帯びていく。

【動画】絵の完成まで一緒に描く=佐藤慈子撮影

 「ええよ」

 「ええな~」

 刻々と変化していく絵を見な…

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