物理学の分野でも、AI(人工知能)を取り入れた研究を模索している。「学習物理学」という新しい分野を打ち立て、文部科学省科学研究費補助金を受けたプロジェクトで代表を務める京都大学理学研究科の橋本幸士教授に話を聞いた。
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――橋本さんがAIに興味を持ったのはなぜですか?
きっかけは、英グーグル・ディープマインド社の「アルファ碁」が2015年ごろに人間の囲碁のチャンピオンを次々とやぶったことなど、AIですごいことができはじめていると思ったためです。AIが碁で人に勝つなんて、かなり先だろうと思っていたので、衝撃でした。
実は碁は、物理と似ているんです。囲碁は碁盤に石が並んでいて陣取りをするゲームですが、実際の物質も、電子が並んでいて、それぞれにスピンの向きがあり、向きが全部そろうと磁石の性質を持ちます。磁石になるかならないかというのは、物理にとって非常に重要な性質なんです。「ここに置いたら陣地をとれる」という計算をAIはやっているので、物質の性質も見つけられるかもしれません。
AIに物理や宇宙の考え方を…