1993年11月5日の昼下がり。大阪市内のホテルの喫茶室で、元大阪大学教授の杉原達(とおる)さん(72)は、いつになく緊張していた。
現れたのは落語家の桂米朝さん。3年後には人間国宝に認定される上方落語界の雄だ。
「(杉原)先生、大丈夫ですか」
元ゼミ生だった吉田太郎さん(56)が声をかけてくれた。上方芸能に詳しくインタビューに付き添ってもらっていた。
「僕はずっと緊張しっぱなし。吉田君がいてくれて、本当に心強かった」と杉原さん。
米朝さんへのインタビューは成功し、杉原さんの代表作となる著書につながっていく。
教え子に人生を大きく後押しされるとは、思ってもみなかった。
吉田さんとの出会いは91年…