新世AI・しごと編

 旅行会社のコールセンターで働くオペレーターの画面に、顧客からメッセージが入った。

 「ホテルに着いたのに、私の予約が見つからないと言われた」

 状況を把握した人工知能(AI)のアドバイスが、画面右上に次々と表示される。オレンジ色の文字で「顧客は怒っている」。緑色で「共感を見せて」。

 オペレーターが「カウンターで予約番号を確認しましたか」と尋ねると、顧客は「何を考えているんだ? もちろんしたぞ」。

 AIの助言に従い、オペレーターは居場所を尋ねた。顧客が予約したホテルと違う場所にいることがわかると、予約画面が表示され、オペレーターが新たな予約を確定。顧客は納得した。

 終了後、AIが即座にやりとりを評価し、オペレーターに必要なビデオ研修を提示してくる。

  • 「AIは格差を縮める可能性」 これまでの「常識」覆す新たな研究も

 イスラエルの顧客サービス支援大手「ナイス」が提供するAI支援システム「Enlighten Copilot(エンライテン・コーパイロット)」のデモ映像だ。

ナイスがイベントで示したAI支援機能のデモ。オペレーターの男性(右)とAIによる支援画面が映し出されている=同社提供

 英語で「啓蒙(けいもう)する」を意味するエンライテンの売りの一つがセンチメント(感情)分析だ。顧客やオペレーターの言葉、話す速度、トーン、会話の文脈などから、顧客の心理状態を推し量る。客の言葉が真意か皮肉かも見分けるという。

 「単調で退屈な仕事が自動化され、人間はより洗練された仕事をこなせるようになる」。ナイスの顧客サービス部門のトップ、バリー・クーパー氏はそう言う。

 同社の製品は世界で数千社に活用され、ソニーやトヨタ自動車、日本航空も導入する。

 AIが職場に入り込み、「同僚」となり「部下」となり、時に「上司」ともなる時代。私たちの働き方はどう変わるのか。スキル(技能)や所得の格差は広がるのか、逆に縮まるのか。AIの導入が進む代表的な職場の一つ、コールセンターの今の姿から探る。(サンフランシスコ=五十嵐大介)

コールセンターの仕事に入り込むAI

同僚はAI 「敵」というより「救世主」

 顧客サービス支援会社「ナイ…

共有
Exit mobile version