#4 【ジレンマ】の背景
高齢化率が主要国の中で日本に次いで2番目に高く、人口減少が続くイタリア。極右の流れをくむ右翼政党が率いる政権は移民や難民の流入阻止を掲げる一方、外国からの働き手を必要としている。
「世界一美しい丘の上の町」と呼ばれる中部オルビエート近郊。昨年10月、創業30年の住宅タイル製造会社の工場を訪ねると、砂ぼこりと汗にまみれてナイジェリア出身の難民、オガール・オコさん(36)が黙々と作業をしていた。
大きな粘土の塊からひとつかみ分をちぎり取って、長方形の型枠にはめる。「簡単そうに見えてすごく難しいんだ」。笑顔を見せた。
【連載】移民・難民と世界 ー危機とジレンマの欧州ー
寛容か排斥か――。10年前の「難民危機」は、人権を重んじる欧州の価値観と、あるべき姿を激しく揺さぶった。統合、右翼、理念、トラウマ、ジレンマ、そして幻想。キーワードをもとに、欧州のいまを追う。
2016年に母国を離れ、リビアからゴムボートで地中海に出た。1年がかりでイタリアにたどり着いたが、難民として認められたのは一昨年9月。「ようやく契約書を交わすまともな仕事ができるようになった」と喜ぶ。午前8時から午後2時までの勤務で月給は約950ユーロ(約15万円)。週末はレストランでも働いている。
この工場では、従業員4人のうち、オコさんを含めて3人が難民だ。タイルを一枚ずつ手作業で作る職人の伝統を守るのに欠かせない存在となっている。
「きつい仕事をやるイタリア…