戦時中の加害行為を否定する言説は後を絶たない。当事者がいなくなりつつある今、記憶を共有する施設の展示はどうあるべきなのか。

 被爆資料やパネルなどを展示する長崎原爆資料館(長崎市)。リニューアルをめぐって3月に開かれた運営審議会で、委員の一人が発言した。

 「南京大虐殺の歴史的事実関係をどう考えているのか。裏付けは何もない。でっちあげですよ」

 資料館には現在、南京事件も含めた旧日本軍の侵略や加害行為の展示がある。原爆投下に至る歴史を、多角的に伝えている。モニターで流れる映像では、「南京占領では、日本軍は中国兵捕虜や一般市民を殺害・暴行するなど、大虐殺事件を引き起こした」と字幕で説明している。

展示内容の更新について意見を交わす長崎原爆資料館の運営審議会=2025年3月、長崎市、小川崇撮影

 委員は続けて、南京事件の展示を続けるかどうか、事務局を務める長崎市の担当者に問うた。担当者は「現時点で決まっていることはない」と答えた。他の委員からは、発言に対して「全く幻だということを歴史的事実として認めることはできない」といった異論も出た。

 「でっちあげ」と主張したの…

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