東京・上野の路上で暮らす人たちの間で、在日ベトナム人の作った「揚げ春巻き」の差し入れが定番メニューの一つになっている。小ぶりで食べやすいサイズのものが、透明のパックに3本入り。脂っこくないのも特徴だ。
上野や、「日雇い労働者の街」として知られた山谷などの周辺で路上生活者を支援する「ひとさじの会」が配っている。月に2回ほど、会を主宰する吉水岳彦さん(45)やボランティアのスタッフが夜回りをしている。
5月20日の夜、約20人のボランティアの中にベトナム人の若者4人の姿があった。弁当や揚げ春巻きなどを持って、路上生活者たちに声を掛けて回っていた。
友人に誘われて初めて参加したというレ・ティ・タオさん(25)は翌朝8時から仕事だったが、「(夜回りで出会う人たちは)みんなやさしいから心がうれしくなる」と夜10時近くまで活動を続けた。2018年に技能実習生として来日し、今は特定技能のビザでホテルなどの清掃の仕事をしているという。
吉水さんによると、ひとさじの会の活動を在日ベトナム人が手伝うようになって10年近い。その中心にいるのは、技能実習生などより以前から日本にいる大先輩。「ボートピープル」として来日したベトナム難民の人たちだ。
1975年4月にベトナム戦…