ある意味、ロシア出身のダリア・カサトキナ(26)は、今のテニス界で、もっとも勇気のある選手の一人だと思う。
「勇気」
通常、テニスの記事で使うとしたら、弱気の虫を追い出し、リスクと隣り合わせのショットでも果敢に打ち込んで、勝負を制したような場面だ。
カサトキナは母国に帰れば拘束されるか、家族にも身の危険が及ぶかもしれない中、自らの正義を公言することをいとわない強さがある。
【連載】インタビュールーム3 全豪テニスが映した戦争
ウクライナ侵攻の直後からロシアとベラルーシの選手に扉を開いてきたテニス界。表面的な回答になりがちなメインインタビュールームでは語られることが少ない戦争に対する葛藤、迷い、憤り。選手の本音に迫りました。
昨年の全豪オープンでロシアのウクライナ侵攻について、記者会見で持論を展開したことが話題になった。
「ウクライナにはたくさんの友人がいる。そうした人たちから話を聞き、もし私がその人たちの立場に置かれたらと想像すると、心が痛む」
一刻も早く戦火に終止符を打つべきだと訴えた。
「私は父に2年間も会えていない。残念だけど、それが人生」
彼女には、事情がある。
2022年夏、動画投稿サイ…