親の信仰を強制されると、子どもにはどんな影響が生じるのか。その裏にある構造的な問題とは何か。親の信仰の影響を強く受け、生きづらさを抱えてきた「宗教2世」の聞き取りを通じ、「信仰の継承」について研究してきた龍谷大の猪瀬優理教授(宗教社会学)に聞いた。

龍谷大学の猪瀬優理教授=2024年11月14日午前11時59分、大津市、島崎周撮影

 ――2022年に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件以降、「宗教2世」の問題が注目されました。以前からの変化は。

 ネットの掲示板などで、苦しみや生きづらさを発信している2世は、以前からいました。また1985年には、親が信仰する教義を理由に交通事故に遭った子への輸血を拒否し、死亡した事案がありました。90年代には、教義によって高専生が必修だった剣道を履修せず、退学処分をめぐって裁判にまで発展した事案もありました。ただ当時は、2世の問題として社会的な認知は広まらなかった。

 今回の大きな変化は、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係などが指摘され、これまで個人の問題と考える風潮があった宗教の問題が、社会の構造的な問題として捉えられるようになったことです。

 その中で、親の信仰の強制で子どもが深刻な影響を受ける問題が社会に認識されました。これまでの問題提起があったからこそだと思います。

  • 「神の子」ゆえ受けた「虐待」 このまま終われない…2世の決断

 ――2世や3世への聞き取りをしてきたそうですね。

 学部生の時と大学院生の時、主に信仰継承について調査をしていた際、ある教団を脱会した複数の2世の方々に話を聞きました。2世として成長することの苦しさ、受ける影響の大きさを知り、親からの教えで苦しむ人たちの存在に衝撃を受けました。

 ――子どもへの信仰の強制をどう考えますか。

親の「不幸になってしまう」という不安から

 逃れられない状況か、選択の…

共有
Exit mobile version