トランプ再来 解説と展望

 「負けない程度の武器しかこない」

 ウクライナ東部で戦う兵士が言っていた。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、米国は最大の支援国になると同時に、西側諸国を団結させた。一方、ロシアの核使用を誘発するレッドラインを越えることを恐れ、高度な武器の提供には度々二の足を踏んできた。同じ理由で欧米の兵器をロシア領内への攻撃に使うことも原則禁じている。バイデン政権の及び腰で、「勝てない」状態に置かれていることにウクライナ側は不満を募らせてきた。

 トランプ前米大統領の当選で今度は「取引」外交の難題に直面する。支援に否定的で、継続も不透明。トランプ氏は「24時間で戦争を終わらせる」と豪語するが、具体策は明かさない。ウクライナの勝利を望むかどうかへの言及も避けている。

 「和平」に向け支援を「人質」とし、ウクライナに対してロシアに占領された領土の大幅譲歩や軍事同盟に属さない「中立化」を迫る可能性すらある。ロシアにとっては自らの暴挙が正当化され、「勝利」をうたえる格好の機会になりうる。

 「弱いバイデン路線か、予測不能のトランプか」。大統領選前に聞いたそんな言葉には、ウクライナの苦境がにじみ出ている。

「トランプ氏ならレッドラインを」ウクライナ兵の期待

 ウクライナ兵のアントン・ペ…

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