モイーズでは相談に訪れた女性たちの情報を厳重に保管していた=2023年10月12日、パリ、大貫聡子撮影

 「赤ちゃんを迎えるための仕事も収入もないことを、あなたが理解してくれるといいなと思っています」

 「自分は望まれなかったと考えて私が与えた命を無駄にしないでください」

 「あなたは私の人生の一部です」

 匿名出産の制度があるフランスで、当時高校生だった17歳の女性が養子縁組機関に残した手紙には、こうした文言が何度もつづられていた。2016年に自分が産んだ子にあてて書かれたものだ。

 手紙は、子の父親は肌が褐色で目が青い背の高い男性であること、ピルを飲んでいたが妊娠したこと、自分で育てることをあきらめるのは難しい決断だったことなども伝える。

 望まぬ妊娠に悩み、女性が誰にも相談できず孤立して出産するケースが絶えない。匿名出産など女性と子の命や権利を守るフランスの取り組みとは。日本で独自に母子を支援する慈恵病院の視察に同行しました。

 「9カ月もおなかで抱えた女…

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