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国立ハンセン病資料館の内田博文館長

■国立ハンセン病資料館・内田博文館長に聞く

 国立ハンセン病療養所で実施されていた大規模な入所者の解剖の実態について、強制隔離など国策による人権侵害を検証した厚生労働省の「ハンセン病問題検証会議」は最終報告書(2005年3月)で、「尊厳を有する存在として扱っていなかった」などと総括している。検証会議で副座長を務めた内田博文・国立ハンセン病資料館館長に、ハンセン病政策における解剖の問題点と今後の課題を聞いた。

【連載】ハンセン病 疑惑の解剖記録

 岡山県の国立ハンセン病療養所で見つかった約1800人分の解剖記録の一部から、不可解な記述が数多く見つかりました。各地の療養所で実施された解剖は多くの問題をはらんでいました。新たな実態が浮かび上がります。

  • 解剖の本人同意に死後の日付 捏造の可能性 岡山のハンセン病療養所

 ――国立ハンセン病療養所「長島愛生園」(岡山県瀬戸内市)の調査から、入所者の解剖への同意書にあたる「剖検願」を医師らが捏造(ねつぞう)していた疑いが浮かびました。本人の自由意思に基づく正当な同意を得ずに解剖が実施されていた実態がうかがえます。当時の時代背景や医師らの動機をどう考えますか

 「療養所での解剖は遅くても1920年代ごろには始まった。だが49年に制定された死体解剖保存法以前は、日本には解剖について詳細に定める法律はなかった。同意の無い解剖は死体損壊などの罪に問われる可能性があり、療養所では、本人や親しい入所者の同意を取るようにしていた」

 「入所者は『死亡イコール解剖』というぐらい多くの人が解剖された。多くの解剖作業を進めるために、入所者に意思を確認することもなく実施したケースもあったのだろう。愛生園で見つかった捏造の疑いがある解剖記録の数々は、罪にあたるかもしれないので捏造してでも本人同意を得ていたことにしようとした痕跡ではないか」

 ――解剖は一般的に病態を解明し、医療に役立てるという目的がありますが

研究材料とみられていた患者たち

 「療養所で行われた解剖がす…

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