受刑者にとって「苦しい場所」でなければならず、秩序維持が最優先――。そんな日本の刑務所に、受刑者の「生き直し」の支援が求められているという。法務官僚として刑務所や少年院の施策を担当し、現在は罪を犯した人の立ち直りを研究する福山大人間文化学部の中島学教授に聞きました。刑務所は変われますか。
――これまでの刑務所はどのような場所だったのでしょうか。
刑務所は「苦しい場所」でなければならないという意識が根強くありました。刑法が義務づけてきた「刑務作業」は刑罰のためにあり、懲役刑はそれを義務としてきました。「懲罰主義」という考えに根ざしたもので、刑務所としても、市民感覚としても、広く受け入れられてきたものでした。
――懲罰主義、ですか。
懲役や禁錮刑は、自由を奪う刑罰「自由刑」で、日本では明治期に導入されました。刑罰の目的をどうとらえるかは、大きく二つの対立する考え方がありました。ひとつは、受刑者に正しい行動規範を教育する「感化主義」という更生を重視する考え方。もう一つが、受刑者に苦しみを与えて「もうこんな場所には来たくない」と思わせる「懲罰主義」という考え方です。どちらを重視するか一定のせめぎ合いはありましたが、懲罰主義が圧倒的に主流でした。
――刑務作業の問題はどこにあったのでしょうか。
従来の刑務作業の問題は、それが社会復帰後の就労と全く無縁のものが大半だったことです。しかも、受刑者は施設が一方的に割り当てた作業を指示どおりに実施するだけでした。
受刑者は出所後、再び犯罪を起こさず、必要な支援を受けながら社会の一員として生活できる能力が必要になり、自ら様々な選択をして生きていかなければなりません。多くの刑務作業は、そうした能力に結びつけるという視点がありませんでした。
- 出所後に戻りたくなった刑務所 呼び捨ての日々から突然「さん」付け
――それでもなぜ、刑務作業が中心という処遇は見直されなかったのでしょう。
2000年代には、作業中心…