4月に生まれた前田海璃ちゃん=2025年1月2日午後、石川県珠洲市、田辺拓也撮影

 海に近い、半壊した自宅。

 前田しげ子さん(72)=石川県珠洲市三崎町=が夫の写真に手を合わせるようになったのは、昨年11月ごろのことだ。

 写真の中の夫は海の道具を背に、長靴姿で笑っている。

仏壇に飾られた前田進さんの写真=2024年12月31日午後2時7分、石川県珠洲市、田辺拓也撮影

 今でも「海に出たままなんかなあ」と思う。

 隣には4月に生まれた孫娘の写真。会えるのを楽しみにしてたのにね。

 あの日から、1年。

【連載初回】家族と過ごした元日

昨年の元日、最大震度7の激しい揺れが能登半島を襲いました。能登の人たちは家族や友人らと楽しい正月を過ごしていました。

仏壇には4月に生まれた孫の写真が置かれていた=2024年12月31日午後2時7分、石川県珠洲市、田辺拓也撮影

 「今日は行かんでいいんじゃない」

 昨年の元日、午後3時半過ぎ。近所の友人宅に行くという夫、進さん(当時74)の後ろ姿に前田さんはそう声をかけた。

 奥能登を最大震度7の地震が襲ったのは約30分後。

 揺れが収まると、金沢から帰省していた長男の洋一さん(45)と次男の孝さん(38)、次男の妻の麻衣さん(35)とともに自宅の外に飛び出した。

 洋一さんと孝さんは、父が向かった近所の友人宅へ駆けていった。

 防災行政無線が大津波警報の…

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