想定すべき揺れの大きさはどうあるべきか――。

 阪神・淡路大震災では、住宅10万棟以上が全壊し、ビルの中間層がつぶれる被害も目立った。設計の想定より、はるかに大きな揺れが観測された。どんな揺れを想定して耐震設計したらよいのか。30年前に突きつけられた課題はいまも残ると、京都大名誉教授で舞鶴高専の林康裕校長(66)は考える。

 1995年1月17日朝、東京の建設会社に勤務していた林さんはニュースを見て驚いた。すぐ神戸市の実家に電話をかけたが、いつまでたっても話し中のままだった。

 この時、両親は倒壊した古い木造家屋に閉じ込められていた。余震で広がったすき間から抜け出すことができた時、父のパジャマは脱げ、体はすすで真っ黒になって出てきたと後に聞いた。父親は、その2年前、台風に備え屋根瓦をふきかえたが、地震対策は考えなかった。

 関西で大地震は起こらない。多くの人が漠然と考えていたことは、幻想だった。

 被害調査が進むと、建築基準法の下、81年に改正された基準以降の建物被害は少ないことが報告された。「新耐震設計法(新耐震)」で設計された鉄筋コンクリートの建物の被害率は低かった。しかし地域により、新耐震の8~12階程度のマンションの中程度の被害率は25%以上で、70年以前に建てられた低層マンションより高かった。新耐震なら問題ないというわけではなかった。

夜間も崩壊したビルの取り壊し作業が続いた=1995年3月、神戸市

 被災地で観測された強い揺れは、設計で想定している揺れの2倍以上あった。いまの想定で十分なのか、震災から学んで解明していく必要があると林さんは考えた。

 関西で地震は起こらない。根…

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