経営相談を頼まれて訪れた介護施設は雰囲気が暗く、スタッフも不満ばかりを口にしていた。利用するお年寄りも楽しくなさそう。稼働率は下がり、スタッフの給与支払いも滞っている。
「みんな、不幸じゃないか?」
そう感じた臼井宏太郎さん(52)は2009年、札幌市で福祉事業会社をつくった。人(ヒューマン)が信頼(トラスト)で結ばれた介護(ケア)をしたい。だから、社名はHTCである。
デイサービスの施設に「我が家」という名をつけ、臼井さんは理念を掲げた。「我が家に関わる全ての人を幸せにする」
事業の存続に大切なのは利益。顧客満足度を上げて利用者を増やさなければ、それはついてこない。満足度アップには、スタッフのモチベーションを上げなくてはならない。
理念経営が功を奏したのだろう。デイサービス施設、訪問看護など7事業所を展開するなか、利用者は増えた。これまでの15期、黒字を続けている。
理念を会社全体に浸透させる…