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セックスレスについて研究するアリス・パッハーさん=本人提供

A-stories セックスレス夫婦 ずっとこのまま?⑤

 なぜ日本にはセックスレスカップルが多いのか。博士論文のテーマにセックスレスを選び、「したいけど、めんどくさい」の著書もある社会学者のアリス・パッハーさんに、セックスレス現象から垣間見える日本社会について聞いた。

 ――なぜセックスレスの研究を始めたのですか。

 オーストリアからの交換留学生として明治大学で学んでいた15年前、50代の専業主婦2人と話す機会がありました。話の流れで「うちはセックスレスで、旦那とはしないのよ」「家政婦みたいなもんだけど、セフレがいるから」と明るく言われ、「セックスレスって何?」「何で離婚しないの?」と私の頭の中は大混乱になりました。

 その後、「身体と社会」という授業で日本のセックスレス現象が採り上げられ、雷に打たれたような衝撃を受けました。よく「出産後なんとなく」とか、「仕事で疲れているから面倒くさい」とか言われますが、その背後に何があるのか、知りたいと思ったんです。

 ――確かによく挙げられる理由ですね。

 これまで、20~40代の男女43人に自身の性意識や性行動についてインタビューしてきました。「楽しくない」「疲れている」「相手に性的魅力を感じない」など、心理的な要因を挙げる人が多かったですが、妊娠・出産を経験すると、カップルというより母親・父親という意識が強まり、2人の時間や空間をあまりつくらなくなるのが日本特有の現象だと思いました。

 そして、質問に対し「日本人だからしょうがない」などと語る一方で、自分にとってのセックスの意味や、望ましいセックスについてなかなか答えられないのも特徴的だと思いました。

 ――なぜ語れないのでしょう。

 人の性のあり方を指す「セク…

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