Smiley face
週末に射撃場で練習する人たち=2024年5月26日、ヘルシンキ郊外、牛尾梓撮影

 ヒト・モノ・カネが自由に行き来する経済共同体として発足した欧州連合(EU)。ロシアによるウクライナ侵攻を機に、強固な防衛力を備えた共同体へと、かじを切ろうとしている。

 ロシアと1300キロ超にわたり国境を接するフィンランドの首都ヘルシンキ郊外。「撃て!」。乾いた音が、室内射撃場に響いた。週末になると、多くの市民が訪れる。

 「自分の身を、自分の国を、自分の手で守りたいから」

 訓練に来ていたロッタ・サルミナンさんは言った。2023年1月、女性の入隊が志願制となっているフィンランド軍に、28歳で入隊した。きっかけは前年2月、ロシアがウクライナに侵攻したことだった。除隊した今も、腕を保つために射撃場に通う。

 この射撃場の利用者も、侵攻前の1千人から1・5倍に増えた。大きな変化は、女性や家族連れが目立つようになったことだという。

 「銃への忌避感は、180度変わった」。経営者シモ・ラトバラさん(46)は説明する。

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