ヒト・モノ・カネが自由に行き来する経済共同体として発足した欧州連合(EU)。ロシアによるウクライナ侵攻を機に、強固な防衛力を備えた共同体へと、かじを切ろうとしている。
ロシアと1300キロ超にわたり国境を接するフィンランドの首都ヘルシンキ郊外。「撃て!」。乾いた音が、室内射撃場に響いた。週末になると、多くの市民が訪れる。
「自分の身を、自分の国を、自分の手で守りたいから」
訓練に来ていたロッタ・サルミナンさんは言った。2023年1月、女性の入隊が志願制となっているフィンランド軍に、28歳で入隊した。きっかけは前年2月、ロシアがウクライナに侵攻したことだった。除隊した今も、腕を保つために射撃場に通う。
この射撃場の利用者も、侵攻前の1千人から1・5倍に増えた。大きな変化は、女性や家族連れが目立つようになったことだという。
「銃への忌避感は、180度変わった」。経営者シモ・ラトバラさん(46)は説明する。
【連載】揺らぐEU 「理想主義」の足元
右翼政党の台頭、止まらぬ難民・移民の流入、ロシアのウクライナ侵攻……。今、EUで何が起きているのか。9日に山場を迎える欧州議会選を前に、記者が現場を歩きました。
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