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【連載】 サッカー王国の光と影 第5回

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ドーハで2022年12月、W杯でクロアチアに負けて大会敗退が決まり、肩を落とすブラジル代表の選手たち=ロイター

 サッカー「王国」ブラジルが、ワールドカップ(W杯)の優勝から遠ざかっている。米国、カナダ、メキシコで来年開催されるW杯で、2002年の日韓大会以来となる優勝を果たせるのか。現地で数十年間にわたって取材を続けるジャーナリストの沢田啓明さん(70)と大野美夏さん(57)に、ブラジルサッカーの変化についてたずねた。

【連載】 サッカー王国の光と影

​W杯で史上最多5度の優勝を誇る「サッカー王国」ブラジル。貧困層が国民の半数を占めるこの国では、貧しい出自を持つ選手が無数にいます。貧困層にとってサッカーとは何なのか。一方で、王国はなぜ近年のW杯で優勝できないのか。サッカーを通じて、ブラジル社会の「現在地」を歩いた全5回の連載です。

「ハングリー精神」減少

 ブラジルで「サッカー」と「貧困」は切っても切り離せません。かつては著名な選手の多くが、貧困層の出身でした。元代表のカカ選手は中流層の出身ですが、例外的な存在です。

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ヨハネスブルクで2010年6月、W杯のチリ戦で相手選手を抜き去るカカ=ロイター

 しかし、経済発展を続けるブラジルでは以前と比べ中流層が増えました。中流層の親は子どもがプロを目指すことを良しとしない傾向が強い。

 貧困下で育った選手は「絶対にプロになる」というハングリー精神を備えていますが、そのような選手は減っています。経済発展がブラジルサッカーの力をそいでいる面もあるかもしれません。

 ハングリー精神を持った選手…

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