金属の表面はでこぼこだらけ。縁は欠けていたり、ひびが入っていたり。うかつに触ると、手を切りそうだ。
そんな打楽器がずっと、滝川二(兵庫)の野球を見守ってきた。
「勝利のトマト」。そう呼ばれる赤く塗られたサスペンションシンバルは、いつも応援席の最前列にある。
アルプスの夏音
高校野球の応援の演奏をめぐる物語
吹奏楽部を指揮する顧問の西谷尚生(まさお)さん(59)は、常に打球の行方を目で追う。そして、安打になればすかさず「トマト」を4回たたく。
バシャン、バシャン
バシャン、バシャン
楽器とは思えない濁った金属音がスタンドに響くと、即座に演奏が安打のテーマに切り替わる。
得点が入れば「バシャン」の…