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アグネス・ダルバシさん=2025年1月6日、ブダペスト、寺西和男撮影

【連載】証言 アウシュビッツ解放80年(5)

反ユダヤ主義が高まる中、アウシュビッツ強制収容所の生存者たちは、差別と憎しみの再来に心を痛めています。一方で、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃に対する批判も認識し、複雑な思いで見つめています。

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 「生き残ることで必死だった」。ハンガリーの首都ブダペストに住むアグネス・ダルバシさん(92)が、アウシュビッツ強制収容所に列車で連れられてきたのは、12歳だった1944年6月。覚えているのは、一緒に移送された祖父が一人で歩けず、仲間の男性たちに肩を支えてもらい、足を引きずっていたことだ。

 その直前、ダルバシさんらは、ユダヤ人を隔離するために、ハンガリー北東部ミシュコルツにつくられたユダヤ人の強制居住区域「ゲットー」に入れられた。

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アグネス・ダルバシさんと両親=本人提供

 宝石商と時計店を営んでいた祖父は連行される前、商品を近くの山中のワインセラーに隠した。ナチス・ドイツに協力するハンガリー人の警察官は商品の在りかを聞き出そうと、棒で何度も祖父の足を打った。口を割らない祖父にしびれを切らした警察官は、祖母も同じ目にあわせると言い出した。祖父は仕方なく隠し場所を伝えたが、足の裏は傷だらけで歩けなくなっていた。

 ハンガリーでは1920年代…

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