【連載】大乱(テラン)のあと 李在明政権と韓国政治のゆくえ

韓国で李在明(イジェミョン)政権が発足しました。昨年12月3日の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領による非常戒厳で始まった大混乱は、何をあぶり出したのでしょうか。新大統領の人物像やユーチューブの猛威のほか、建国以来の根深い保革対立などの構造的な問題も交え、韓国政治の今を読み解きます。

 韓国大統領選の選挙戦について取材した、ソウルに住む韓国政府元当局者は「そういえば、こんなこともあった」と語り、大統領選の新しい現象としてこんな話をしてくれた。

 元当局者は89歳の母親から突然、頼みごとをされた。「旅券をつくっておくれ」。海外旅行の経験もないのに、なぜ。その時はあいまいに答えたが、大統領選が迫った5月末、母親が再び元当局者を問い詰めた。「旅券はもうできたの。大統領選が終わってしまう」

 大統領選と旅券になんの関係があるのかと尋ねると、母親はこう答えたそうだ。「(進歩〈革新〉系の)李在明(イジェミョン)氏が大統領になったら、韓国(朝鮮)戦争の時と同じように、老人をすりつぶして油を搾り取るそうだ」。突拍子もない話をどこで聞いたのか。ユーチューブだった。

  • 【解説人語】韓国大統領選で語られなかったこと 直面する二つの問題
最大野党・共に民主党の街頭演説には多くのユーチューバーが集まり、生配信をしていた=2024年4月7日、ソウル、太田成美撮影

■「投票行動の数パーセント…

共有
Exit mobile version