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イラクでの対テロ作戦に長年関わったアブドルカリム・ハラフ氏=2024年6月24日、バグダッド、其山史晃撮影

 過激派組織「イスラム国」(IS)には様々な人々がそれぞれの理由で引き寄せられました。過激思想やそれに基づく組織を社会にはびこらせないためには、どうしたらいいのでしょうか。イラクの治安機関幹部として長い間、過激思想の問題に取り組んできたアブドルカリム・ハラフ氏に聞きました。

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 ――過激思想の特徴とは何でしょうか。

 過激思想には共通点があります。暴力への依存です。イスラム過激派の思想は特にその傾向が強い。

 ISの文書や内部の指示からわかるのは、ある地域を支配するために、暴力を使うことを組織内で推奨していたということです。公衆の面前で、とても残虐な方法によって罰を与えることで、住民の精神にその思想を植え付けるのです。

◇アブドルカリム・ハラフ氏

1980年にイラク軍に入隊。イラク戦争後、内務省で対テロ戦のため機構改革や、作戦指揮にあたった。2019~22年は軍最高司令官である首相の報道官を務めた。

 ISの犯罪行為を振り返ってみましょう。生きたまま人間を燃やす。おりに入れて水に沈める。高いビルから投げ落とす。爆薬を首につけて吹き飛ばす。「泥棒」の手を切り落とす。

 こうした残虐行為を通じて人々に最大限の恐怖を与える狙いは、社会を臆病者の群れに変えることです。罰を恐れるがゆえに、言われたことには何も考えずに従う人間の集団です。そこには、法律など関係ありません。

難しかった住民の説得

 ――そのような思想を持った組織には、どう対抗するべきでしょうか。

 過激思想を受け入れる土壌を…

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