練習試合後、朱雀の鈴木志廣教諭(右端)の話を聞く連合チーム(朱雀・西乙訓・京都教大付・大江)の選手たち
  • 写真・図版

人口減ニッポン 高校野球の今⑤京都の連合チーム

 不ぞろいのユニホームに、帽子。京都大会の抽選会を1週間後に控えた6月15日、朱雀、西乙訓、京都教育大付、大江の4校による連合チームが練習試合に臨んだ。

 部員は朱雀8人、西乙訓1人、京都教育大付3人、大江1人で、計13人だ。主将は朱雀の2年生、山内舞夢(まいむ)が務める。

 4校で今夏に挑むことが決まり、初めて集まったのは5月下旬。この日が5試合目の練習試合だった。

  • 「人口減ニッポン 高校野球の今」特集ページ

 「サードが前に出たら、投手が三塁のベースカバーに入らないと!」

 試合中、指揮を執る朱雀の玉川勝巳監督(48)から大きな指示の声が飛んだ。投手と内野、内野と外野の連係プレーなど、確認すべきことが次から次に起きる。「良いボール!」「ここ盗塁あるよ!」と、選手同士も大きな声をかけ合った。

 試合は一回にいきなり二塁打が出るなど3度得点機を作ったが1本が出ず、0―16で敗れた。

 部員不足による連合チームでの出場は、2012年夏から認められた。朝日新聞と日本高校野球連盟の調査によると、当初は11チームだったが、10年で10倍に増えた。07年の選抜大会で8強入りした室戸(高知)も、今夏は自チームだけでは部員が足りず、高知大会には連合チームで参加する。

 朱雀は1980年代までは府4強に名を連ねるほどの実力校だったが、近年は連合チームでの参加が続く。昨秋と今春の府大会は、大江とともに別の2校と組んだ。「フレンドリーに話すことを心がけている」と山内。練習のほかバーベキューなどで打ち解け、秋、春とも1勝ずつ挙げた。

 ただ、その2校はこの夏、1年生が加わって単独チームでの出場が可能になった。新たに今回の4校で組み直された。

 玉川監督には葛藤があった。「大会に出たほうがいい、というのは指導者のエゴかもしれない」と。

 連合チームは、試合経験の少なさや戦力面の不安から、大量失点して敗れることも少なくない。その恐れを考えると、「学校でキャッチボールするだけの方が楽しいのでは」と思うこともある。一方で、学校教育の部活動である以上は「ベンチで涙するような悔しさも経験してもらいたい」とも感じる。

 そんな監督のモヤモヤを吹き飛ばすように、選手たちは前向きだった。大江の2年生、西山珀斗は入学当初から部員1人だ。平日は顧問と2人で練習する。「週末にみんなでできるから、普段は1人でも頑張れる。秋と春、連合チームでも勝てることを証明できたのは自信」と胸を張る。

 西乙訓の山部暁也は1年生ながら練習試合で4番を任され1安打。「みんなで試合をできるのは楽しい。3年間で少しでもうまくなりたい」

 京都教育大付の3年生、堀内基宏は入学時から様々な学校と連合チームを組んできた。「単独だとまとまりが違うのかなと考えたこともある。でも、連合では普段なら関わることのない人たちと一緒に野球ができる。最後まで誇りをもってやりたい」

 6日、わかさ京都で京都大会の1回戦に挑む。=終わり(大坂尚子)

共有
Exit mobile version