高校野球で、逆転を呼ぶ応援曲として知られる「ジョックロック」。そんな「魔曲」を持つ智弁和歌山の吹奏楽部が6月16日にある応援演奏の祭典「甲子園ブラスバンドフェスティバル」(朝日新聞など主催)に出場する。
その応援を背に、主将だった「夏の甲子園」で優勝し、監督としても全国制覇を遂げた中谷仁さん(45)に「応援の力」を語ってもらった。
アルプスの夏音
高校野球の応援の演奏をめぐる物語
――高校時代、印象に残った応援はありますか
実は高校生の時はプレーに必死で、応援はあまり耳に入っていませんでした。でも、忘れられない打席があります。僕にとって「初めての甲子園」だった2年生の春の選抜大会での打席です。
準決勝、対戦相手は高陽東(広島)。0―2で迎えた八回裏、2死からの3連打でつくった満塁のチャンスで打席に入りました。
1球1球、球審が判定するたびに地鳴りのような歓声が沸き上がりました。アルプススタンド全体が応援してくれているような雰囲気でした。自身の2点適時打を含め、4点を挙げて逆転勝ち。応援に、試合の流れを変える大きな波のような力があると実感しました。
打席で集中していて無音に感じる時でも、安打を打ったあとのファンファーレやスタンドの歓声は、今も耳に残っています。いいプレーをすると応援団が一緒になって喜んでくれる一体感が、気持ちいいと感じました。
「優勝の夏」になかったこと
――指導者になってからの感じ方は
応援のありがたみを身をもって知ったのは、指導者になってからです。
スタンドから全力で応援して…