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 ◇第66回全国選手権(1984年)1回戦

  境 (鳥取) 0000000000 0

 法政一(西東京)0000000001 1

          (延長10回)

 まだホームランを打たれただけだ。40年前の8月11日、境(鳥取)のエースだった安部伸一は甲子園のマウンドでそう思っていた。

 第66回大会(1984年)。法政一(西東京、現・法政)との1回戦は、両チーム無得点のまま延長に。10回2死まで得点はおろか、1本の安打も許していなかった。初めて打たれた安打が、本塁打。安部は左中間のラッキーゾーンに入った打球を見送った後、身をかがめてロージンバッグを触った。

写真・図版
境-法政一 十回裏法政一2死、末野は左中間にサヨナラ本塁打を放つ。投手安部

 「わかってなかった。試合が終わったなんて。『次のバッターに投げないと』、と思っていた」。二塁手が駆け寄ってきて「ナイスピッチング」と肩をたたいた。

 そこで、現実を理解した。

 この試合は、自分でも驚くく…

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