1995年の阪神・淡路大震災から2024年の能登半島地震へ。30年間に起きた災害を軸にネットの功罪を考えます。この連載は敬称を省略しています。
災害時に人命救助から被災者支援まで活用されるようになったインターネット。だが、去年の能登半島地震ではX(旧ツイッター)などのSNSで偽情報が拡散される問題が起きた。
日本初の大学間コンピューターネットワークを設立し、「日本のインターネットの父」といわれる慶応大教授の村井純(69)は偽情報拡散の背景に「広告モデルの過度な高度化」があると指摘する。
- 個人情報ネットに公開、救助進んだ 虚偽あふれるSNS時代の災害で
無料のSNSは広告収入で運営される。だが、ネット上には多くのサービスがあり、消費者の関心と時間を奪い合う「アテンション・エコノミー(関心経済)」が生まれた。
ツイッターは起業家のイーロン・マスクに買収され、Xと名称を変更。表示数などに応じて広告収入が投稿者に還元されるしくみが導入された。
能登地震では「#SOS」「#助けて」を含む投稿の7割が日本語使用者以外の投稿だったと東大准教授の渋谷遊野が分析。海外からの偽情報とみられる投稿が相次いだ。
偽情報でも関心を集められれば、投稿者やSNS事業者の収益になる状況で、関心経済の過剰な進化は「抑制する必要がある」と村井はいう。
ただ、SNSは言論の場でもあり、憲法が保障する「表現の自由」を守る必要から、村井は、政府による規制よりも「市場の自浄作用」が望ましいとする。「偽情報が拡散されるSNSは長期的にはユーザーが離れ、広告収入を得られなくなる。偽情報を野放しにはできないはずだ」
【特集ページ】ネットと災害 30年史
1995年の阪神・淡路大震災から昨年の能登半島地震へ。進化したインターネットは命を救う役割を果たす一方、偽・誤情報を拡散させる弊害も生み出しました。30年間に起きた災害でのネット上のやりとりを追いながら考えます。
LINEヤフーは能登半島地…