【連載】北朝鮮の表と裏
北朝鮮は最近、ロシアとの協力を誇示し、海沿いのリゾート施設で楽しむ市民の姿を公開しました。一方で、各国の調査や脱北者の証言を積み重ねると、北朝鮮が長く自称する「地上の楽園」の表と裏が浮かび上がります。最新情勢を5回の連載で伝えます。
北朝鮮は2023年10月、一般労働者の給与を10倍以上に引き上げました。脱北者や韓国の専門家らによれば、北朝鮮では最近、コメや肉類など食料品の値段が引き上げ措置前の2倍程度になり、現地通貨の対ドルレートも大幅に下落しています。韓国のウェブ北朝鮮専門媒体「デイリーNK AND(Archive North Korea Data)センター」の李尚龍(イサンヨン)ディレクターは「北朝鮮全体の経済は厳しい」と語る一方、金正恩(キムジョンウン)総書記らがロシアとの協力やサイバー攻撃などで得た外貨を国家統治資金につぎ込んでいる可能性を指摘します。
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――北朝鮮の賃上げ政策について教えてください。
北朝鮮は23年10月、公共部門の労働者や教師などの賃金を少なくとも10倍に引き上げる措置を取りました。これは、02年7月1日の「経済管理改善措置」以来、21年ぶりの大規模な賃金改革でした。国家主導の経済統制を強化することを目的としています。
しかし、賃金の上昇幅は、企業の支払い能力を超えており、一部の企業は賃金を期限内に支払えないか、規定通りの額を払えないため、混乱が生まれています。名目賃金は上昇しましたが、実質購買力は低下しており、住民の生活には大きな助けになっていません。
国家主導の統制を強化 その背景、目的は
――金正恩氏は国家による経済統制の強化を目指しています。
22年以降、金正恩政権は糧…