人材の「霞が関離れ」が指摘されて久しい。志願者が減り、若手・中堅の離職者が増える傾向にどう向き合えば良いのか。現役官僚だった20年前に霞が関改革を唱え、現在は政策シンクタンク「青山社中」代表を務める朝比奈一郎さん(50)に話を聞いた。

 ――学生のキャリア官僚離れが深刻です。2023年度の国家公務員の総合職試験の申込者数は1万8386人で、13年度に比べて約6千人も少なく、減少傾向が続いています。

 ひとつは「待遇の悪さ」が理由でしょう。私が通商産業省(現・経済産業省)で官僚になってまもなくの2000年ごろや辞める間際の10年ごろは、残業時間が月200時間に達したこともありました。いまは改善が進んでいますが、長時間労働のわりに給与が低いことにかわりはありません。

 ――離職者も増加傾向にあるようです。

 「選択肢の増加」も理由でしょう。有力な転職先としてのコンサルタントが増え、若くして起業する人も増えています。転職市場の拡大も理由です。若い人だけでなく入省15年以上の「中堅」を受け入れる企業も増えています。

 「やりがい」の低下も重要な問題です。

 ――仕事での充足感が下がっている、ということですか。

 はい。私が官僚だったころは、入省して2~3年の若手官僚も政策の立案に携わる機会が多くありました。業界団体との調整など、省外との仕事なども含め、すぐに「バッターボックス」に立つことが出来ました。しかし、小泉政権の頃から政策づくりが官邸主導で進められ、上からの指示を「こなす」場面が増えているようです。官僚の仕事のスケールが小さくなり、「政治家の奴隷になっている」と指摘できる面もあります。

 ――経産省の職員だった2003年、他の省庁の若手にも声をかけて提言組織「プロジェクトK」をつくり、初代代表を務めました。

 霞が関の構造改革を掲げた組…

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