石川県沿岸で人に近づき、次第に「甘がみ」するようになったオスのミナミハンドウイルカは、南隣の福井県沿岸に移った後、さらに珍しい行動をみせるようになった。

【連載初回はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…

福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です。

 2022年5月、福井市の鷹巣海水浴場でマリンスポーツのガイドをしていた島田尚久さん(64)は、海面に浮かべたボードの周りを泳ぐイルカに気づいた。

 風に乗ってボードを走らせる「ウィングフォイル」と呼ばれるマリンスポーツの最中で、「イルカはボードのスピードに合わせ、先導するように1時間ほど泳ぎ回っていた」という。

マリンスポーツ「ウィングフォイル」のボードを先導するように泳ぐ野生イルカ=2022年6月、福井市の鷹巣海水浴場、エスぺランサ福井提供

 「夢のような時間だった。まさか野生のイルカと一緒に泳げるなんて」

 島田さんは浜に戻り、波打ち際でイルカとたわむれた。

 イルカは島田さんの股の間にクチバシをすり寄せ、「ジー、ジー」と甘えるような鳴き声を上げた。

 島田さんはアクションカメラを回しながら、足元に絡みついてくるイルカをなでた。

 異変を感じたのは、その直後だ。

野生イルカはなぜ人に近づくのか。記事の後半では、その珍しい行動を動画とともにお伝えします。専門家にも見解を聞きました。

 足に「鹿の角のような硬いも…

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