慶応大学の土屋大洋教授

 国際通信の99%以上が経由する海底ケーブル。米中対立の深まりなどで、改めてその重要性に注目が集まっている。海底ケーブルを30年近くにわたって研究している慶応大の土屋大洋(もとひろ)教授(サイバーセキュリティー)に、近年の国際的な動向や日本のあり方について、考えを聞いた。

 ――米国は2020年以降、海底ケーブルを含めた通信の分野から中国企業を徹底的に排除しようとしています。中国が情報を盗み取ることを警戒しているようですが、そもそも、海底ケーブルから情報の盗聴は可能なのでしょうか。

 「第三者が海中でケーブルに細工をして、情報を勝手に抜き取るというのは、技術的に不可能だと考えています。昔はできたんです。『アイヴィー・ベル』という作戦が有名ですが、1970年代、米国はオホーツク海に敷設してあった旧ソ連の海底ケーブルに盗聴器を取り付けて、勝手に情報を抜き取っていました。当時は銅線のケーブルを使っていて、流れるデータは電気信号でした。でも今は、銅線から光ファイバーになっているので、海中で盗聴するのは不可能だと思います」

 ――光通信になった今も、特殊な装置を取り付けることで、情報を抜き取れるという人もいます。

 「海底ケーブルに何かを取り…

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