2019年6月29日、大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて会談した米国のトランプ前大統領(左)と中国の習近平国家主席=AP

 「米国が対中政策を変える可能性について、何ら幻想を抱いていない」

 中国の代表的な米国研究者の王緝思・北京大教授らは、大統領選を前に中国側の空気を外交誌でこう表現した。トランプ前大統領の1期目は、米中の「貿易戦争」と呼ばれた事態を引き起こした。中国封じ込めの戦略は、バイデン政権では同盟国を巻き込んでより強まった。その基調は変わりようがないという冷めた認識が、北京にはある。

 選挙のない大国・中国が今年、力を注いだのは、米中対立が長引くことを前提とした備えだ。

【連載】トランプ再来 解説と展望

米大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領が返り咲きました。米国に、日本に、世界に、どんな影響をもたらすのか。海外特派員や編集委員が展望します。

 外交では、グローバルサウスを主導する存在としての動きが目立つ。アフリカやアジアの国々の元首を招いた会議や会談を繰り返した。習近平(シーチンピン)国家主席が重視する新興国グループ「BRICS」も拡大路線がすすむ。

 中東の紛争やロシアによるウクライナ侵略には「平和的解決」を訴える。実現性には疑問符がつくものの、米国がイスラエルに肩入れして評価を落とす中だけに、「中国の言うことにうなずく国は少なくない」と北京の外交筋は見る。

現実となった厳しいシナリオ、うかがう機会は

 内政では、アキレス腱(けん…

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