「7月に参院選を控えているので、防衛費の増額について会談で言及しないで欲しい」。日本政府当局者は6月上旬、米政府当局者にそう伝えた。7月1日に開催するワシントンでの日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では何を話し、何を話さぬべきか――。当局者らが下準備を重ねるなか、日本側の米側への切実な要望は「参院選への配慮」だった。
日本側は防衛費の増額を巡る米側の対日圧力が表沙汰になれば、参院選で政権与党に悪影響が出かねないと恐れた。「近いうちに、必ず自国の判断として防衛力を大幅に強化する」。日本側はそう言って説得を試みた。
連載「ニッポンの現在地 2025参院選」
法律や予算によって様々な政策の方向性を決める政治。私たちの生活と直接、間接につながっています。「対トランプ」「物価高対策」など八つのテーマについて現在地と課題をお伝えする連載です。
トランプ米政権の発足後、日本側は再三にわたり、自分たち自身による防衛費増の努力を約束し、米側がこの問題を持ち出すことを防ごうとした。実際、3月、5月の日米防衛相会談で米側が具体的な数値目標に言及することはなかった。
ところが今回は違った。複数の日米関係筋によると、米政府当局者は「3度目はないかもしれない」と否定的な反応を見せた。「これ以上、防衛費について何も言わなければ、ヘグセス米国防長官の政権内での立場が危うくなってしまう」。米側が日本側に非公式に伝えてきた日本の防衛費の数値目標は、国内総生産(GDP)比3.5%だった。
米側の風向きの変化を察知した日本側は、7月1日の2プラス2の開催見送りを提案した。これにより、米側の数値目標の要求が参院選前に表沙汰になることはなくなったが、官邸幹部はもはやそれは「時間の問題」だとみる。「米国が世界中で防衛費増額を求める中、日本だけ数字が表に出ないようにこれ以上説得し続けるのは極めて難しい」
GDP比「2%超」は事実上の既定路線
参院選を理由に、防衛費増額…