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 2010年4月27日。殺人事件などの公訴時効を廃止する刑事訴訟法の改正案が可決され、約130年続いた制度が変わった。これにより、1995年4月28日以降に起きた未解決事件は、現在も捜査が続いている。被害者の遺族らのそばで、ともに歩み続けた警視庁の元刑事がいる。

【地図で見る】全国の未解決殺人事件

殺人事件の時効が廃止されてから今年で15年。未解決の殺人事件の真相解明の一助になることを目指し、事件を一覧できるページを作成しました。各事件のリストでは、情報提供ができる電話番号も掲載しています。

 衆院本会議での可決の瞬間、遺族らでつくる「宙(そら)の会」特別参与の土田猛さん(77)は「見えない力」を感じた。「亡くなった被害者が後押ししてくれた」と思う。

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衆院本会議で殺人事件などの公訴時効を廃止する改正法が成立。傍聴席には目頭を押さえる殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の会員の姿が見られた。2列目左から5人目は小林賢二代表幹事(当時)=2010年4月27日午後1時6分、国会内

 始まりは一つの事件だった。

 2000年の大みそか、東京都世田谷区上祖師谷の住宅で、宮澤みきおさん(当時44)一家4人が殺害されているのが見つかった。警視庁鑑識課の検視担当だった土田さんは、この事件の捜査に携わった。

 「あまりにもむごい。人がもっとも安全に感じられる自宅で、一家全員が殺害されるなんて」

 鑑識課から捜査1課管理官となった後、現場を管内とする成城署副署長になった。1課に戻った後、署長として再び成城署へ。同じ署で副署長と署長を務める異例の人事だった。解決に向けて尽力したが、07年に退職を迎えた。

 「ぽっかりと心に穴が開きそう」な日々を過ごす中で、警察官の立場から離れて見えてくるものもあった。「事件に強制的に区切りをつける時効さえなければいいんじゃないか」

 国立国会図書館に通って時効…

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